気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「どうして?」

「俺も君をおとなしそうな人だと思っていた」

「志信さんは一度も、私にひどい真似をしなかったよ。いつも真正面から向き合ってくれた」

「どうかな。結婚するように言ったのは、充分ひどい真似だろう」

 分厚いガラスを隔てて、目の前を鮮やかな青い色の魚が泳いでいく。

 それを目で追ってから、ふと水槽に反射した自分の笑った顔に気づいた。

「それをひどい真似だって思ってる時点で、いい人だよ」

 彼はずっと私に償おうとしていたし、この関係が私にとって悪いものにならないよう、努力もしてくれていた。

 今まで私を軽んじてきた人たちなら、お互いを理解し合うためのデートになんて誘わなかったはずだ。

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