気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「嫌な話ばかりしちゃったけど、私、いい人に恵まれた人生を送っているんだ。本当の両親が事故で亡くなった時に引き取ってくれた両親でしょ? ずっと私の友だちをしてくれている円香でしょ? それと、志信さん」

「俺もそこに加わっていいのか?」

「うん」

「……ありがとう」

 志信さんが私の隣に立って、同じように青い魚を目で追う。

 彼の横顔は水槽のライトに照らされると、よくできた彫像のように美しく見えた。

 改めて、顔の造形が非常に整った人なのだと感心する。

「ずっと異端扱いだったから、君に褒められるたびに照れ臭くなる」

 形のいい唇が紡いだ言葉の不穏さにどきりとした。

「異端って?」

「今まで君は、一度も水無月家について聞いてこなかったな。名前だけでも聞いたことは?」

「志信さんの苗字ってことくらいしか……」

「じゃあ、ご家族ともども健康的だったんだな。いいことだ」

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