気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「契約結婚の相手が志信さんでよかった」

 瞳を潤ませて言った優陽の言葉に応えようとして、すっと背筋が冷えた。

 契約結婚――。

 どうして俺から始めたその関係が、こんなにも胸に突き刺さるのだろう。

「一年終わるまでまだまだ長いけど、これからもよろしくお願いします」

 深々と頭を下げられても、同じ言葉を返せない。

 たった一年しか彼女の夫でいられない事実が、急に重くのしかかった。

「私も志信さんの幸せのために頑張るから、してほしいことがあったらなんでも言ってね」

「……ああ、そうさせてもらう」

 ふと、俺の幸せとはなんだろうと思った。

 うまく世間を誤魔化して、この契約結婚を完遂すること?

 何事もなかったように優陽と離婚し、その後は友人として――俺の知らない男の隣で幸せを手に入れた彼女を見ること?

 それなら幸せになってほしくないと、不意に嫌な考えが込み上げた。

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