気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 俺以外の誰かに、その温かな笑みを向けてほしくない。

「志信さん?」

 俺の名前を呼ぶ優陽は心配そうだった。

「ん?」

「なんだか顔色が悪いから……。食べすぎちゃった? それとも変な話をしたせい……?」

「いや。自分を知ってもらうためのデートだったのに、それらしいことをなにもできなかったなと反省していただけだ」

「志信さんのこと、昨日よりはたくさん知れたよ。だから反省会はなしで」

 くすくす笑う優陽は、俺が嘘を吐いたことに気づいていない。

 重くて苦しいもの。それなのにどんなに傷ついても焦がれ、渇望してしまうもの。

 自分の中に芽生えた感情がそう(・・)だと気づいて、息ができなくなった。



◇ ◇ ◇



 デートの終わりは、レストランの上階にあるスイートルームで迎えた。

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