気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 もうシャワーを浴びたのかと驚いたけれど、私の頭が彼でいっぱいになりすぎて、時間の感覚がおかしくなっているのかもしれない。

「まだ……起きてるよ」

「……そうか」

 返事はしたものの、振り返って志信さんの顔を見る勇気は出なかった。

 彼の顔を改めて見たら、私に触れたあの唇からきっと目を離せなくなるだろう。

「今日はデートに付き合ってくれてありがとう。その、さっきは……いや、おやすみ」

「……おやすみなさい」

 私も楽しかったとか、あなたのことを知れてよかったとか、改めて伝えられたはずなのに、素っ気ない挨拶だけで会話を終わらせてしまった。

 背後から志信さんがベッドに入る衣擦れの音が聞こえる。

 部屋の電気が消えると、一気に空気が重くなった。

 胸が痛くて苦しくて、さっきのキスについて聞きたくてたまらなくなる。

< 213 / 276 >

この作品をシェア

pagetop