初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
「ちょっと芹くん、なにしてんの?立ち上がりなよ。お父さんも黙ってないでなんか言って!」
二人に声をかけていたら「玄関で何を騒いでいるの?」と母親がこちらに向かってやってきた。
「あ、お母さん!お父さんは棒立ちだし、芹くんがしゃがみ込んでるんだけど、どうにかして」
「あらあら、二人とも何をしているのよ。ごめんなさいね、恭二くん。来て早々、騒がしくて。ほら、琴葉も早く入っておいで」
お母さんは二人を見て呆れ顔だ。
さっきまで無言で突っ立っていたお父さんはお母さんに詰め寄った。
「ゆず、琴葉の彼氏が恭二くんだと知っていたのか?」
「ええ。予定を決める時に教えてもらっていたわ。今はそんなことはいいから葵は父親らしくしてちょうだい。芹はさっさと立ち上がりなさい。そこに居たら邪魔でしょ」
お父さんを軽くあしらったお母さんは二足のスリッパを並べる。
一足は来客用、もう一足は私専用のチェック柄のスリッパだ。
「ちょっと芹くんどいて」
まだしゃがんでいた芹くんをわざと押しのけて家に上がるとスリッパを履く。
恭二くんも「お邪魔します」と言って私に続いた。
「琴葉、飲み物はどうする?お茶にコーヒー、紅茶もあるけど」
「恭二くんは何がいい?」
「俺はなんでもいいよ。琴葉が選んで」
「じゃあ、コーヒーで」
「分かったわ。先にリビングに行っといて」
お母さんはそのままキッチンに行き、私たちはリビングに向かった。