初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
恭二くんと同棲するようになって変わったことといえば、電車通勤から運転手付きの送迎になったことだ。
平社員の私と役職付きの恭二くんでは出勤時間や退社時間が違うので、恭二くんのお父さんが『うちの車を使えばいいよ』と言ってくれた。
父親も『娘の車はこちらで出す』と提案したけど、恭二くんのお父さん(社長)が『琴葉ちゃんはジョイントイの社員だから』と言い、話し合いの末に久住家の方から車を出してもらうことになった。
申し訳なかったけど、私のことを考えてのことだったのでご厚意に甘えることにした。
そういえば、私の怪我を聞いた恭二くんの両親も『犯人を捕まえよう』と言っていたみたいだけど、それは止めてもらうように恭二くんに頼んでおいた。
その日の仕事を終えると、会社の駐車場に向かう。
そこには黒のセダンが止まっていた。
ドアを開けて「お疲れ様です」と言いながら乗り込んだ。
「お疲れ様です」
「延原さん、お願いします」
運転手の延原さんに声をかけると車が動き出す。
しばらくして、マンションのエントランスの車寄せに止まった。
「琴葉さん、着きましたよ」
「ありがとうございました」
お礼を言って車を降りた。
延原さんは六十代の優しい男性で、残業するとき以外は十八時半には会社の駐車場で待ってくれている。