初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋

「琴葉ちゃん、飲んでる?」
「ぼちぼちです」

今日の主役、加絵さんに話しかけられて私は苦笑いで答える。

仕事が終わり、送別会のために大手チェーン店の居酒屋に来ていた。

営業事務の先輩の水田加絵さんが結婚を機に退職することになった。
直接指導してもらったわけではないけど、年齢も近いことから可愛がってもらっていた。

出張で参加できない恭二くんに朝から言われていたし、私を励ます会の時にお酒を飲み過ぎてやらかした前科がある。

二度とお酒で失敗はしたくないので、乾杯の時にビールに軽く口をつけただけで、それ以降はノンアルコールでやり過ごしていた。

「そういえば、加絵さんも飲んでいないですよね」

お酒大好きで飲むと楽しくなってよく笑っている印象があった。
さっきから見ていたけど、ウーロン茶しか飲んでいない。
 
「実はね、お腹に赤ちゃんがいるの」
「えっ、そうなんですか?」
「うん」
「おめでとうございます!」
「ありがとう。でも、全然実感がないんだけどね」

加絵さんは嬉しそうに、まだ膨らみのないお腹を撫でる。
その表情は優しさに満ち溢れていた。

しばらくして加絵さんは旦那様になる人が迎えに来てくれたみたいで、みんなに挨拶してから一足先に帰っていった。

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