初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋

「そういう吉瀬さんも灰原の世話をよく焼いているよね」
「それは私の推しが灰原くんなので」
「推し?もしかして、この前言ってた推し活の相手ってこと?」
「うわっ、よく覚えてますね」

望は感心したように言う。

「だろ。俺は記憶力がいいんだ」
「そうなんですね。私、結構忘れっぽいから羨ましいです」
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど、推しって好きとかの感情はないの?」

伊藤さんは疑問を口にする。

「ないですね。私、元々アイドルの推し活をしていて、推しにリア恋してたんです。その推しが結婚してしまってショックで落ち込んでる時に灰原くんが入社してきたんです」
「あー、なるほど?」
「灰原くんの顔はドンピシャ好みだけど、推しに恋してもいいことはないと学習済みなので恋愛感情は一切ないです。今は推しのためにサポートするのが生き甲斐なんです!その推しが彼女一筋だなんて尊過ぎてニヤニヤしちゃいます」

望が一生懸命話しているけど、伊藤さんはあまりピンときていないみたいだ。
私も望から説明を聞いた時、頭にクエスチョンマークが浮かんだから、伊藤さんの気持ちがよく分かる。

一通り話し終えたのか、今度は私にターゲットが変わった。

「そういえば、琴葉。元カレと別れてから新しい出会いがあったの?」
「新しい出会いはないよ」

嘘は言っていない。
恭二くんとは新しい出会いではないからだ。
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