初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋

「以前、営業先でちょっとミスしてしまったことがあったんだ。あの時はマジで落ち込んで帰社すると、羽山さんは普段と変わらずお疲れ様ですと言ってチョコをくれたんだ。今ハマっているチョコなんですって笑いながら言って……」

伊藤さんは当時のことを思い出しながら穏やかな表情で話す。

「俺の状況は知らない羽山さんの普段通りの対応が嬉しかった。勝手に励まされた気がして、もらったチョコを食べて気持ちを切り替えることができたんだ」

そういえば、大容量のチョコを購入した時に望とか男女問わず営業部のフロアにいた人に配った記憶がある。
あれは軽い気持ちでみんなにあげていたので、まさか伊藤さんにとって意味のあるものになっていたなんて想像もしていなかった。

「最初は、仕事も丁寧だし気遣いの出来るいい後輩としか思っていなかったのに、何気ない言葉とかふとした笑顔に気が付いたら惹かれていた。だけど、羽山さんに彼氏がいると知って諦めるしかなかった……。そんな時、羽山さんが彼氏と別れたという話を聞いて欲が出てしまった。出来るなら付き合いたいと思ったんだ」

伊藤さんは直球で気持ちをぶつけてきた。
だけど、私の心の中には恭二くんしかいないから、申し訳ないけど伊藤さんのことは考えられない。
誠実な彼には嘘偽りのない私の本当の気持ちを話さないと失礼な気がした。

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