初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
「あの、私は……」
「ストップ。少しの猶予が欲しいから今は言わないで」

私の言葉を遮った伊藤さんは、少し切なそうな表情を浮かべて話を続けた。

「せめて一週間でいいから俺のことを考えて。だから、一週間後に返事を聞かせて欲しい」

その言い方から、まるで私の返事が分かっているかのような気がした。

一週間後か……。
考えてと言われても、伊藤さんの気持ちには応えることが出来ない。
告白されて申し訳ない気持ちになるのは初めてだ。
とはいっても、ほんの数回ぐらいしか告白された経験はないけど。
彼氏がいると正直に言わなかった罪悪感と、断って気まずくなるのも嫌だなとか様々な思いが渦巻いて胸が苦しくなった。

「それじゃあ、戻ろうか」

伊藤さんは何事もなかったかのように言って居酒屋に向かって歩き出す。
私も少し遅れて足を進めた。

居酒屋に戻ると、私は元の席に座って伊藤さんはさっきと違う場所に移動した。
きっと、あの告白の後ということで気を遣ってくれたんだろう。

私の目の前に座っていた望も移動していて、空席だった。
店員にウーロン茶を注文し、半分ぐらいを一気に飲んだ。

「あれ?いつの間に帰ってきてたの?遅いから心配してたのよ。お腹でも壊してたの?」

そんなことを言いながら、違う場所にいた望が戻ってきた。
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