初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
「えっ、別に何も……」
「何もないって表情じゃないけど」
思わず目を逸らしてしまった私と視線を合わせるように顔を覗き込んできた。
駄目だな。
射抜くような目で見つめられると、恭二くんに隠し事なんて出来るわけがない。
「実は、伊藤さんから告白されて返事は一週間後に聞かせてほしいって言われて……」
「伊藤が?」
驚いたように目を見張った恭二くんを見て、すぐさま自分の思っていることを伝えた。
「あっ、でもちゃんと断るから」
私の中では答えは出ていて、それは決して揺らぎようがない。
問題なのは、どう言って断るかということだけだ。
ふっと視線を落として考える。
同じ部署ということもあり、断って仕事がやりにくくなったり気まずくなるのは嫌だけど正直に伝えないと相手にも失礼だ。
でも、私の返事で伊藤さんを傷つけてしまったら……と思っただけで、罪悪感に苛まれる。
伊藤さんが嫌な人だったりしたら、こんな感情は抱かなかったはずなのに。
「伊藤も見る目があるよな。俺の琴葉を好きになるなんて」
恭二くんがわざと明るい声を出して私の頭をクシャリと撫でた。
そして、私としっかり目を合わせて話を続ける。
「伊藤はさ、覚悟を持って琴葉に告白したと思うから、どんな返事でも受け入れるはずだ。例え、断ったとしても仕事に影響を及ぼすような奴じゃないよ」
そう言って微笑んだ。