初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
上司として伊藤さんの人となりを知っているから言える言葉なんだろう。
さっきまで不安定だった気持ちが落ち着いてくる。

「まあ、伊藤が琴葉のことを好きでも、俺は渡すつもりはないよ。琴葉が俺のことを嫌いになって手放さない限りは一生ね」

和ませるためだったのか、冗談めかして言う恭二くんを見て笑みがこぼれた。
きっと彼には私の考えていることはお見通しだったんだろう。

「嫌いになんてならないし、手放すわけないよ。私だって恭二くんを誰にも渡さないからね」
「願ったり叶ったりだよ。ホント、琴葉は俺のツボを心得てるね」

甘やかな笑みを浮かべながら私を抱き寄せた。
抱きしめられると、私の大好きな恭二くんのウッディなフレグランスの香りが鼻をくすぐる。
彼の香りに包まれながら私は感謝の言葉を伝えた。

「恭二くん、ありがとう」
「ん?なんのこと?」

私が迷ったり困っている時は、欲しい言葉を言ってくれたり、さりげなくフォローしてくれる。
でも、それは恭二くんにとっては特別なことではないんだろう。

「なんでもない」

恭二くんの胸に頬を寄せて背中に腕を回すと、私の行動が彼の欲望に火をつけたのか、さらに強い力で抱きしめられた。
 
「そんな可愛いことをされたら、今日は寝かせてあげられないかも。覚悟して」
 
耳元で囁かれ、ゾクリと肌が粟立つ。
今日もまた彼に翻弄される未来しか見えなかった。
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