初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
「なら、どうして逃げたんですか?」
「それは……」
「わざとじゃないなら逃げる必要はないですよね。あなたのバッグが当たって階段から落ちた人がいるのに」
「ごめんなさい。本当に怪我をさせるつもりはなかったの。ちょっと脅かそうと思って……」
脅かそうと思ってバッグをぶつける?
意味が分からない。
「三条さん、悪ふざけじゃすまないんですよ。もし、私が大怪我をしていたら被害届を出していたと思います。だけど、今回は怪我の程度も軽かったし、あまり大事にしたくなかったので見送ったんです」
いい機会だからハッキリ言うことにした。
「怪我したのが私だけだったから被害も最小限で済んだけど、これは本当に運が良かっただけ。でも、他の人を巻き込んでいたら取り返しがつかないぐらい大事になっていた可能性もあるんですよ。責任とれますか?それに、階段から落ちて打ち所が悪かったら私の命の危険もあった。そうなれば、私の家族はありとあらゆることをして犯人……あなたを見つけ出すと思うわ。三条さんは犯罪者になるのよ」
当時のことを思い出し、冷静に言葉を紡ぐ。
どういうつもりであんなことをやったのか分からないけど、そろそろ何が正しくて何が悪いかを理解した方がいい。
いつまでも世間知らずのお嬢様のままではいられないんだから、自分の言動に責任を持つべきだ。