初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
「あの日は本当に魔が差したというか、軽い嫌がらせのつもりだったの。ちょっと躓く程度だと思っていたのに、羽山さんがホームに倒れている姿を見て頭が真っ白になった。私はなんてことをしてしまったんだろうって急に怖くなって……」

言葉を詰まらせた三条さんは自分の手のひらをじっと見つめ、話を続けた。

「あなたの言う通り、一歩間違えれば取り返しのつかないことになっていた。許してもらえなくてもいいから謝罪だけはした方がいいと助言されて会いに来たの。本当にごめんなさい」

三条さんは深く頭を下げ、その姿から後悔しているのが伝わってきた。
彼女のやったことは許せないけど、怪我も治ったし謝罪してくれたので水に流して終わりにするべきだろう。

「三条さん、頭を上げて。怪我も大したことなかったし、謝罪してくれたからもういいわ」

この話は終わりでも、私にはまだ気になっていることが残っていた。

「それで、三条さんは恭二くんのことは本気なの?」
「いいえ、最初は御曹司だしいいなと思って声をかけたけど、ハッキリ振られたから未練はないの。でも、羽山さんが彼女だっていうから、嫌がらせのためにちょっかいをかけていただけ。今は不動産会社の御曹司といい感じなの」

神妙な雰囲気から一転、あっけらかんと言う三条さんに苦笑いして、冷めてしまったカフェラテを飲み干した。
< 168 / 180 >

この作品をシェア

pagetop