初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
夢か現実なのか分からない状態で、自分の言った言葉も久住部長から言われた言葉もあやふやな感じだった。
酒は飲んでものまれるな、とはよく言ったもので、あの日の私を叱りたい気分だ。

久住部長は大きなため息をついた。

「俺が君を抱いたことは覚えているんだよね?」
「……っ、それは、なんとなく……はい」

ハッキリと口に出されると恥ずかしくなり、視線を泳がせる。

「じゃあ、どうして忘れて下さいとか、なかったことにするなんて言ったんだ?」
「それは、久住部長にとって一夜の過ちだと思ったからです。あれは酔った勢いというか、部長は優しいから彼氏と別れた私を慰めてくれただけで……」
「あのさ、俺の気持ちを勝手に決めないでほしいんだけど」

不本意だとばかりに私を見つめる。

「俺は何とも思っていない女性を抱いたりなんてしない。それに、俺はあの時、好きだと言ったはずだけど」

私のことを好きだと言った?

「じゃあ、あれは私の気のせいや夢ではなく……?」

久住部長から告げられる言葉に心臓が痛いぐらいドキドキしている。

「気のせいって……もしかしてとは思っていたが、俺の告白は覚えていないってことか」

落胆したような声色に、申し訳なさが募る。
というか、久住部長の告白を覚えていないなんて最悪だ。
そんな貴重な場面の記憶が曖昧な私はかなりの罰当たりなヤツではないのかと思っていたら、久住部長はさらなる爆弾を投下した。

「昔は俺に結婚してと言ってプロポーズまでしてくれたのに」 
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