初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
「っ!覚えて……るんですか?」
「忘れるわけがないよ。目をキラキラさせてプロポーズされたんだから。ね、琴葉?」
フッと楽しそうに笑い、私の名前を呼んで優しい眼差しを向けてきた。
私のことを覚えていたという驚き、そして久住部長の破壊力抜群な笑顔に昔の記憶が蘇ってきた。
あれは、私が六歳の時に参加した有名ホテルの会場を貸し切ったホームパーティーでのこと。
テーブルの上にあるピンク色の三十センチぐらいの大きさで、耳のところに水色のリボンが付いているウサギのぬいぐるみを見つけた。
可愛さに惹かれ、それを手に持って頭を撫でていたら、いきなり三条さんに奪われた挙げ句、私は突き飛ばされた。
女性スタッフの人が仲裁に入ろうとしてくれたけど、一歩遅かった。
私は何が起こったのか分からず、尻もちをついたまま唖然としていた。
『あなた、何をしているの?喧嘩は駄目でしょ』
『ケンカなんてしてないよ。るかのぬいぐるみをかえしてもらっただけだもん』
スタッフの人にそう言い放つと、三条さんは奪ったウサギを手に数人のグループの輪の中に入っていった。
『大丈夫?怪我してない?』
『うん……』
女性スタッフに支えられて立ち上がった。
お尻も痛いし、ぬいぐるみも取られた悲しさで私は部屋の隅で膝を抱え小さくなって泣いていた。
いつもだったら、過保護なお兄ちゃんたちが慰めてくれていた。
不運なことに二人は対戦ゲームで盛り上がっていたみたいで私のことに気づいていなかった。