初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋

一人泣いているところに声をかけてくれたのが久住部長だった。
芹くんの友達だと紹介され、何度か話したことがあったので彼のことは知っていた。
 
『琴葉ちゃん、泣かないで』

久住部長は私の目線に合わせるようにしゃがんで頭を撫でてくれた後、ハンカチで涙を拭ってくれた。
そして『これあげる』と言って紙袋を差し出してきた。

その中には、さっき私が持っていたウサギのぬいぐるみの手のひらサイズの物が入っていた。
ウサギだけじゃなく、イヌ、ネコ、クマ、パンダなど様々な種類のぬいぐるみが含まれていた。

『こんなにたくさんいいの?』
『うん。僕のお父さんの会社で作っているぬいぐるみ。さっきのより小さいけど、琴葉ちゃんにあげる』

芹くんたちと話す時とは違った優しい言葉遣い、なにより彼の笑顔に私の胸はキュンとときめいた。

それに、ぬいぐるみのプレゼントも泣いている私を見て急遽詰めてくれたんだろう。
その時は気が付かなかったけど、渡された紙袋はここのホテルのものだった。

こんなことをされて好きにならないわけがない。
幼い私は簡単に恋に落ちた。
私の初恋は久住部長だ。

『きょうじくん、ことはとけっこんして』
(この時の私は、久住部長のことをきょうじくんと呼んでいた)

私の突然のプロポーズに久住部長も驚いて目を見開いていた。

『琴葉ちゃん、結婚て意味知ってる?』
『うん、すきな人どうしがずっといっしょにいることでしょ。パパとママみたいに』
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