初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋

大学三年の時、就職活動を始めるにあたって真っ先に浮かんだ会社が『ジョイントイ』だった。
きっかけは、久住部長からもらったぬいぐるみ。

部長とは疎遠になってしまったけど、机の上に彼からもらったぬいぐるみを並べていつも眺めていた。
辛い時も、それを見ているだけで心が癒されていた。
初恋は諦めてしまったけど、久住部長の優しさが詰まった可愛いぬいぐるみたちは私の宝物だった。

私は玩具で癒しと元気を与えられていた。
そんな魅力的な玩具を作り出すことに少しでも携わりたいという気持ちを胸に就職活動に力を入れた。
企業の情報収集や勉強はもちろん、苦手だった面接も頑張り、ありとあらゆる努力を惜しまなかった。
だから、内定の連絡があったときは本当に嬉しかった。
自分の力でつかみ取った結果を両親に伝えると喜んでくれた。

この時の私は入社したいという思いが強く、その後のことなんて一切考えていなかった。
久住部長がいる営業部に配属されてから早三年、まさかこんな風に話ができるなんて誰が予想しただろう。

いろいろ端折りながら経緯を伝えたら、久住部長は感慨深げに言った。

「そうか。あの時のぬいぐるみがきっかけか……。琴葉が頑張ってくれたおかげで俺たちは再会できたんだな」

私が『ジョイントイ』に就職しなければ、久住部長とは会えていない。
数年前、頑張って勉強していた自分を褒めてあげたいと思う。

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