初恋御曹司と失恋部下の、一夜から始まる甘い恋
これは夢?
頬を抓ると痛みを感じ、現実なんだと理解する。

「何やってるんだよ。痛いだろ」

呆れたような表情のあと、フッと柔らかな笑顔で私の頬を撫でた。

「本当に琴葉は昔から可愛くて困るよ」

愛おしいものを見るような優しい眼差しを向けられ、胸がキュンと高鳴った。

「ところで、話を整理しておきたいんだけど、俺は琴葉に好きだと告白して抱いた。キスをする前も、嫌だったら避けてくれと言ったけど避けなかった。琴葉は俺を受け入れてくれたと理解していいんだな?」

抱いたとか言われ、あの夜のことを思い出して赤面してしまう。

「あの、ちょっと混乱していて……」
「ゆっくりでいいから気持ちを教えて」

この会社で久住部長と再会できて素直に嬉しかった。
諦めたとはいえ、初恋の人と同じ職場ということに多少期待していた部分はあった。
だけど、会社で初めての顔合わせの時、久住部長は全く表情を変えることなく挨拶した。
今なら彼が仕事の時は表情を崩さない人だというのを知っているけど、当時の私は初対面みたいな反応だった久住部長にショックを受けた。

名前でも気づかれることがなかったので、彼の中で私の存在は消えているんだなと再確認した。
私は久住部長のことは会社の上司として接しようと思ったんだ。
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