冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
玲志に媚を売る由梨枝に、香蓮は顔を歪める。
『だけどまさか、玲志さんのような素敵な方が香蓮の婿になるなんて想定外でしたのよ。こんなことになるなら、もうひとりの娘……愛理でもよかったのではと思ってしまいました』
由梨枝の意味深な言葉に、玲志がかすかに動く。
『それはどういう意味でしょうか』
玲志が問うと、由梨枝がちらりと愛理に視線を送る。すると俯いていた顔がゆっくりと起き上がった。
『香蓮は少々地味でしょう。華やかな顔立ちの愛理の方が、見劣りしないと思いましたの』
『私、玲志さんのこととても素敵だと思いました』
愛理の見たこともない乙女の顔を見て、香蓮は奥歯を噛みしめる。
散々自分を虐げ無理やり自分を家から追い出そうとしていたのに、玲志を見た途端態度を一変させるとは面の皮が厚すぎやしないだろうか。
取り乱すのを必死に耐えると、隣からふっと乾いた声が聞こえてきた。
『お気持ちはありがたいですが、僕は香蓮さんと結婚します』