冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い


 それからさらに数時間後の、午後七時。

 ガチャリと施錠が解除される音で、キッチンに立っていた香蓮はドキッと心臓を跳ね上げらせた。

 もちろん、香蓮以外にこの家に帰ってくるのは彼しかいない。

 玲志が何時に帰ってくるのか、そして夕食がいるのかさえ把握していなかった香蓮は、とりあえず腹を空かせて帰ってくる可能性があるので、最低限の食事を用意しておこうと決めたのだ。

 彼が今何が好きなのかは分からないが、万人受けするであろうステーキとサラダ、コーンスープ……そして、香蓮の母が生前のときに習ったポテトサラダを作った。

 『お、おかえりなさい玲志さん』

 エプロンを急いで解いた香蓮は玲志がリビングの扉を開く前に、自ら開いて彼を迎える。

 二十センチほど高い位置にある端正な顔は、下から上へと視線を流し彼女の顔を見た。

 「……何時(いつ)来たんだ?」

 「えっと、正午ごろです。すべて片付けは終わってます」

 「そうか」
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