冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い


 玲志と同居を始めすでに一か月。

 ついに明日、ふたりの結婚式が都内の式場で執り行われる。

 香蓮は朝から式場に出向き、結婚式場のスタッフと来賓や搬入物の最終チェックを済ませた後、英会話教室に寄ってマンションに帰っていた。

 すっかり日が落ち、時刻は二十時を回っていた。

 とぼとぼと重たい足取りで、マンションに向かって夜道を歩く。

 玲志の理想とする妻になると意気込んだはいいが、結婚式の準備との両立はなかなかきつく、張り切り過ぎたと今更後悔する。

 家に戻れば、ハウスキーパーが作ってくれた食事を食べればいいだけ。掃除も洗濯もすべて彼女が済ませてくれている。

 家庭の負担というのは一切ないが、彼女の心労は大きい。

 夫の玲志とはただの同居人状態で同じ食卓を囲うこともなければ、会話もろくにせず、朝と夜すれ違えば挨拶をする程度。

 時間が経てばこの関係にも慣れてくるかも……と希望を持っていた香蓮だったが、玲志の変わらぬ冷ややかな態度にいちいち傷ついていた。

 精一杯できる限りで身なりも気を遣い、内面を磨く努力もしているが、彼にはまったく認められているという気がしない。


 「おねぇーさん! ハンカチ、落としましたよ!」
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