冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 「恐縮です。本当に主人は素敵だから、人気もありますよね……」

 返す言葉に困りつつ、香蓮は本心をつぶやいた。

 内心、玲志に女性の影が今までなかったという事実が、素直に嬉しく信じたいと思った。

 一方で、仕事一筋でのめり込んでいた理由に飛鳥馬家の復讐が潜んでいるのも分かっているので複雑だ。

 「秘書課の誰も社長の書類には触れさせてもらえなかったのですが、やはり奥様は特別なんですね。とても信頼されているんだと思いますわ」

 「そんな……」

 だが立花に言われて、憎まれている自分がこんなにスムーズに個人秘書代理に抜擢されたことに拍子抜けしたのはたしかだ。

 「もしかして社長、奥さまとなるべく一緒にいたいっていうのもあるんですかね?」

 立花の茶化しに、香蓮の顔が真っ赤に染まっていく。

 「か、彼に限ってそんなことは。ものすごくクールですし」

 「社長って天邪鬼なところがおありだから、本当は奥さまが大好きで離れたくないんですよ、きっと」
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