叶わない恋の秘めごと~堅物上司の好きな人~
みんなで集まると、和気あいあいとした雰囲気が流れる。私はこのアットホームで和やかな職場が好きだ。
「桜祭りかぁ。楽しそうですね」
「乙葉ちゃんも行きたいの?」
「お祭りとか好きなんです」
新堂さんとあの桜並木を歩けたら、幸せだろうな。手なんて繋いじゃったりして。なんて妄想してみる。
「じゃあ仲野と行ったらどう?」
「え?」
社長の発言に、フォークを持つ手が止まる。なぜ仲野くんと? 寂しい者同士、ちょうどいいって感覚のだろうか?
「行く? 乙葉ちゃん」
しかも真に受けた仲野くんが嬉しそうに聞いてくる。
「えっと……」
どうしよう。ここはどう答えれば。
プライベートで会うような間柄じゃないし、それにいくら相手が仲野くんとはいえ、新堂さんの前だし断りたい。こんな時、咄嗟に言葉が出てこない自分が嫌だ。
「仲野、お前にはしばらく自粛するよう言ったはずだが」
返答に困っていると、隣から低い声が聞こえてきた。今まで黙って聞いていた新堂さんだ。
「あっ……いや、その」
仲野くんが気まずそうに頭を掻いている。それを見て、そうだったと思い出す。仲野くんを叱ったって……。
「ったく。もう忘れたのか」