叶わない恋の秘めごと~堅物上司の好きな人~
「なんか食う?」
「はい! 食べたいです」
「じゃあ適当に買ってくる」
そう告げると、露店へと向かう。その背中を目で追うだけで、幸せを感じてしまう。
新堂さんはあの時のこと、口にしないけどいったいどう思っているんだろう。聞く勇気もないけどやっぱり気になる。
「お待たせ」
ぼんやりとしていると、スッと目の前にイカ焼きが現れた。
「わぁ、イカ焼きだ。ありがとうございます」
「ちょっと座るか」
「はい」
座れる場所を探す新堂さんの後を、ちょこちょこと小股で追う。テレビで言っていたように桜は満開で、ひらひらと花びらが風に舞っている。
そんな中、新堂さんがたまたま空いていたベンチに私を誘った。真上には大きな桜の木。風は春の匂いがして自然と心がほかほかする。
隣に座る新堂さんは遠くを眺めていて、その横顔がすごく様になっていて思わずうっとりと見惚れてしまった。
「ん? 何?」
「あ、いえ……」
「お前、口元にタレが付いてるぞ」
ポカンとしているうちに、新堂さんが拭ってくれた。
「子どもかよ」
そしてふっと、口の端を上げ笑った。その破壊力がすごすぎて、かぁーっと顔に熱が集まる。