叶わない恋の秘めごと~堅物上司の好きな人~
「す、すみません……!」
「お前は本当に放っておけない奴だよ」
視線だけよこし、意地悪な口調で言う。どれもいちいちかっこよすぎて、夢から覚めるどころか、溺れ死んでしまいそう。
「一口食っていい?」
「え?」
それ、と指さされ、目を瞬かせながら彼の前におずおずと差し出す。
こ、これは、間接キス? 内心あたふたしていると、新堂さんは大きな口を開け、躊躇なくイカ焼きを頬張った。
「うまい」
「ろ、露店といったらイカ焼きですよね」
冷静に返答しつつ、次に口を付けるのが非常に気まずいな、とか考えてしまう。きっと小学生ですら、こんな小さなことでは狼狽えないだろう。免疫のない自分が情けない。
学生時代、好きな人はいたことはある。でも奥手なせいもあり、彼氏というものはいまだかつてできたことがない。
極度の人見知りで合コンや紹介とかも苦手だったし、そうこうしているうちにこんな年になってしまった。友達には化石扱いされる始末だ。
「動揺しすぎ、このくらいのことで」
「え?」