叶わない恋の秘めごと~堅物上司の好きな人~
仲野くんにまでこんな顔を見られてしまった。もう、それもこれも清家さんがからかうから。恥ずかしい……。
「あれ? 俺のコップがない」
頭を抱えていると、仲野くんが食器棚を見ながらそう言うのが聞こえてきて、あっ! と小さく叫ぶ。
「ごめん、実はこの前私が手を滑らせて欠けちゃったの」
「あ、そうなんだ」
「弁償ってわけじゃないんだけど、これ……」
おずおずと用意しておいた物を差しだす。それを捉えた仲野くんは、目を真ん丸にして驚いていた。
「これ、俺に?」
「う、うん……」
呆気にとられる仲野くんとは裏腹に、清家さんは愉快そうに笑っている。無理もないと思う。だってこのコップ、昨日射的で取った景品で、間違いなく子ども用だから。だけれど、新堂さんがあいつに渡せって何度も言うから仕方なく持ってきた。
「乙葉ちゃんには、俺がいくつに見えてるわけ?」
仲野くんは苦笑いしながらそれを受け取る。すると背後から別の声が飛んできた。
「お前にはそれが似合ってるよ、仲野」
「新堂さん!」
仲野くんの背筋が無意識に伸びている。さっきまで笑っていたのに、一瞬で真面目な顔に戻っている。