叶わない恋の秘めごと~堅物上司の好きな人~
「そうかと思えば、今度は取り引き先放って、必死の形相で乙葉ちゃんを探しに行くしさ。あんな余裕のない新堂を見たのは初めてだったよ」
清家さんは呆れたように、事務所の奥に視線を移す。その先には、仲野くんに指示を出す新堂さんがいた。
あの日、私のことを必死に探してくれていたなんて……。必死に走る姿を想像して、胸が熱くなる。
彼を知れば知るほど好きになっていく。だけど新堂さんには、想いを寄せる人がいる。新堂さんが好きな人って、どんな人なんだろう。清家さんは知っているのかな?
その相手が誰なのか一瞬聞いてみたくなったけれど、聞いたところでショックを受けるだけ。
「新堂さんは責任感が強いので。ただそれだけですよ」
叶わないのはわかっている。あんなことがあったけど、決してうぬぼれたりはしない。
不思議そうに首をかしげる清家さんにそう言うと、私はそっとその場を後にし、仕事に取り掛かった。