叶わない恋の秘めごと~堅物上司の好きな人~


いつも会社の為に身を粉にして働く社長や、どんな仕事にも情熱を持って取り組む一級建築士の新堂さん。会社のムードメーカー的存在で見習いの仲野くんや、ちょっとニヒルなデザイナーの清家《せいけ》さんの顔が浮かぶ。

みんな大切な存在で、小さな建築事務だけど私の居場所。もしかすると、彼によって潰されたり……。不吉な妄想が頭を過る。

「じゃあわかった。中で一杯付き合ってくれるだけでいいから。ね? 何もしないって。せっかくの金曜日なんだしさ」

それが嘘だってことは、さすがに男性経験のない私にもわかる。松浦さんの卑劣な態度に、嫌悪が増していくけれど、それでも強い態度がとれない自分が情けない。

「あの、本当に離してください」
「じゃあ君の会社とは取引やめちゃおうかな」

そう言われ泣き出してしまいそうになる。だが唇をぐっと噛み耐えた。

「あ~あ、君のせいでみんな路頭に迷っちゃうかもよ? いいの?」
「そんな……」

どうしよう。一か八か「何もしない」その言葉を信じてみるか。

「あの、じゃあ……」

一杯だけ、と意を決し口を開いたところで、突如背後からよく知る香りが私を包んだ。


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