叶わない恋の秘めごと~堅物上司の好きな人~
「ではその時はぜひ私も誘ってください」
チラッと新堂さんを見上げれば、目が全然笑っていないことに気が付いた。抑揚のない口調で、怯む松浦さんにそう言う姿は、ちょっと異質だった。
いつも冷静で、どちらかというと寡黙な彼。匠建築事務の一級建築士で、どんな仕事にも情熱をもって取り組んでいる。
お客さんの声に親身になってヒアリングをする姿は温かな雰囲気が漂っていて、その姿に事務員として入社した私は、あっという間に心奪われてしまったのだ。
百五十センチと小柄な私より三十センチ以上高い身長に、涼し気な奥二重の目。黒色の短髪が良く似合っていて、シャープな顎のラインが男らしい。
三十二歳とは思えないくらい若々しくて、俗に言うイケメンの部類に入る彼に、私は二年ほど片想いをしている。
「じゃ、じゃあ俺はこれで」
まるで幽霊でも見たかのように松浦さんはそそくさと駆けていく。そんな松浦さんに新堂さんは深々と頭を下げていた。
「あの、ありがとうございました」
ホッとため息を落としながら、彼の背中を見送る新堂さんにお礼を言う。だけど返ってきたものは、恐ろしいくらいゾッとする低い声だった。