執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「それはだし巻き玉子だからじゃないでしょうか。だしを入れると水分が増える分、巻きづらくなるんです。これはだしの入っていない普通の玉子焼きなので、形が整えやすいんですよ」

大須賀は驚いたようで一瞬ぽかんとしたが、やがて気が抜けたのか、ははっと笑った。

「そうだったんですね。だから母の玉子焼きは毎日歪だったのか」

「でも、だし巻き玉子っておいしいですよね。ふんわりしていて」

「確かに柔らかくて、だしの優しい味がしました。母は毎日頑張ってくれてたんですね。もういないので聞けませんが」

ハッとして美都は大須賀を覗き見る。

意味深な言い方をして申し訳なく思ったのか、大須賀は眉を下げた。

「僕が高校生の頃、亡くなったんです」

「それは……思い出させてしまってすみませんでした」

「いえ。もう十年以上も前のことですから。でも……そっか。そんなに毎日頑張ってくれてたんなら、ありがとうのひと言くらい言っておけばよかったな」

乾いた笑い声に胸が詰まる。

美都も母を亡くして酷く落ち込んだ時期があったから、大須賀の気持ちが理解できる。

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