【完結】転生したら乙女ゲームのラスボスだった 〜愛する妹のためにラスボスポジション返上します〜


「おい。ならなんで手合わせしようなんて言ったんだよ。剣術教られないなら手合いの意味なかったろ」

 俺がロイドをじっと見据えると、しらーっと明後日の方を向くロイド。
 これは……つまり。

「お前……俺で遊んだな?」
「ええー? 何のことー?」
「誤魔化すな! 俺は本気で強くなりたくてお前に頼んでるんだぞ……!」
「それはちゃんとわかってるよ~」
「いいや、わかってない! 絶対にわかってない!」


 訓練場の中を逃げまわるロイドを、俺は追いかける。
 けれどロイドはすばしっこく、なかなか捕まってくれなかった。

 ――が、ひとしきり逃げ回って満足したのか、ロイドが急に立ち止まる。
 と同時にくるりと俺の方を向いて、何かを思い出したような顔でこちらに駆けて来た。

 そしてどういうわけか、ロイドは小さなその両手で、俺の右手を強く握ったのだ。
 
「――なっ、んだよ、急に」

 ロイドの突然の奇行に、俺は咄嗟に手を振り払おうとする。
 けれどロイドはそれを許さず、俺の知る限り最も真面目な顔で、俺を見上げた。

「やっぱり……気のせいじゃなかった」

 そう呟いて、俺を見つめるロイドの瞳。
 その眼差しはどうにも気味が悪くて、俺は目を逸らさずにいるのがやっとだった。

(急にどうしたんだ、こいつ……!?)

 困惑する俺を、ロイドは更にじっと見つめる。
 そして数秒の沈黙の後、ようやく口にした言葉は――。


「鉱山でも思ったけど、君の身体、なんか変だよ。魔力はあるのにちゃんと身体を巡ってない。三日も眠り続けてたのって、これが原因なんじゃない?」


 ――俺にとっては寝耳に水の、全く理解不能な内容だった。
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