乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
4-1
「それでそんな急だったのね」

言ってスープカップに口を付けた紗江は、おかわり自由な塩味の濃いコンソメスープを半分ほど飲み干して、はぁと息を吐く。

「でも榊クンを治せる確率高いんでしょ?だったら選択肢なんてひとつしかないわよ」

榊がシンガポールに飛んで一週間。たまたま実家に帰る用事があった紗江の『会って話きくから!』の一言で、結婚式以来の再会が叶ったってわけだった。

真はどうしても体が空かずに、かと言って四人も五人もくっついてくるのは本気で遠慮したいしで。少数精鋭、角さんにまた護衛兼運転手をお願いした。

紗江んちの近くのコンビニで彼女を拾ってもらい、サラダバーが人気らしいハンバーグレストランでランチしながらの事情聴取。話せることだけ、嘘は吐かない。極道の娘として親友として。

「自分がなんにも出来ないのは歯がゆいけど、信じて待つだけでしょ」

紗江に励まされると、ハチマキをぎゅっと結び直したみたいにお腹の底から引き締まる。無限に勇気が湧いてくる気がする。

「大丈夫あたしが保証する。榊クンが宮子を残したまま帰ってこないとかありえないから!宇宙が滅んでもないから!!」

そこまで断言されて思わず口が滑った。だってその言い方まるで。

「紗江もしかして知ってる?」

「知ってるってどれ?」

「え?あー、うん、どれっていうかぁ・・・」

「ねぇもしかして榊クン、宮子になにか言ってった?」

紗江の眼が妖しく光った。
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