乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
『さあ吐け!』って圧に押されて、ハンバーグを切り分けてた手を止め、あたしはいさぎよく観念した。

「出発する日の朝にさ、惚れた女のためだから後悔してない・・・って言われたんだよね」

リアクションが気になりつつ、おそるおそる向かいを盗み見ると、目を瞠って思いっきりフリーズしてる。

「やっぱり驚いた・・・?」

「・・・じゃなくて、ごめん。想像したのと違ってたからビックリしただけで、あの榊クンがそんなハッキリ告白するなんて思ってなかったのよ。そっかぁ、とうとう言っちゃったのねぇ」

感慨深そうにしみじみ頷く紗江。こっちもとっくに知ってた風で、いざフタを開けてみれば、当事者なのにひとりだけ置いてきぼりだった。

「宮子が遊佐クン一択なのは最初から分かってて、ずっと宮子を思ってたからね。実る実らないに関係なく、榊クンにその一途さをつらぬいて欲しかったのが正直な気持ち。あたしが気付いてたくらいなんだから、遊佐クンだって知ってたでしょ?」

「・・・そうみたい」

「榊クンは裏切らないって信じてるだろうし、安心して宮子をまかせてたって思うけど?」

「真にもね、おんなじこと言われた」

「宮子達はどうしたって壊れない自信あるから、あたしはなんにも心配してないわよ」

いつもクールな紗江が、包み込むような眼差しで微笑む。

「ここで言うかーって、なんかちょっと榊クンを褒めてあげたいかな」
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