乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
愛嬌も愛想もないのに、上から可愛がられて下から慕われて。榊のいいトコは他人には分かりにくいじゃない?ってどっか勝手に思い込んでた。あたしだから知ってるって、ちょっと思い上がってた。

全然そんなことなくて、ちゃんと榊が見えてて、紗江も真も、榊があたしを好きだっていつから気付いてたんだろ。榊はいつからあたしを好きだったんだろ・・・?

「やっぱりあたしが末っ子みたい」

苦笑いがひとりでに零れた。

歩幅が違うくらいだって思ってた。みんなの方がひと回りもふた回りも大人だった。今までの景色がどんどん違ってくる、榊と離れてるだけで。

「宮子、帰ろ」

車の中から促す声。今度は真の隣りに収まるとやんわり引き寄せられ、口を盗まれる。

「オレもデキる男なのに、アイツばっか株上げて妬けるねぇ」

「真面目に見せないで頑張っちゃう男だもんねぇ、誰かさんは」

肩によっかかって愛しむように。

「真がいるからあたしは臼井宮子でいられるんだよ。真とだから生きてられるの。あたしの心臓はね?真で出来てるんだからね」

「知ってる。オマエがオレ無しで生きてけないのは」

髪に優しく吐息が埋まる。温もりに閉じ込められる。

「俊哉に負ける気はしねーよ」
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