乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
今夜の会は本家主催じゃなく、あくまで臼井家主催だから、面倒くさい古株ジジィ連中もいない。気楽に晴れ晴れと飲めればそれで。

あの日の記憶や榊の傷がお酒で流せるわけじゃないし、明日が大袈裟に変わりはしないけど、ひとつの区切りになればそれで。あたしにとっても、みんなも。

バーカウンター前に設けた円卓のイス席に真とあたし、主役は後輩達の座卓に呼ばれて今は留守。となりのテーブルには仁兄、甲斐さん、角さん。哲っちゃんやお父さん達は上座でひとカタマリ。

シノブさんがそのうち合流する予定なのと、相澤さんは直前に、藤さんから欠席の連絡が来た。織江さんが急な熱を出したらしく、片時も離れがたいっていう胸キュンな理由で。

『・・・結城にしちゃ珍しいから代理がパニクってるだけ』

うんうん、もちろん織江さんは最愛の妻ですもんねぇ。で。織江さんを一番放っとけないのは、なんだかんだ藤さんですもんね?

あちこち移動できない真に明るく絡んでくる子がいたり、下にはわざと厳しい仁兄にお酌しにくる勇者がいたり。

ずっと自粛モードだったから羽目はずして、お祭り騒ぎになるかと思ってた。みんなただ楽しそうに、はしゃいで見えた。

「榊のカタも付いたしな、仁はそろそろツレが要る頃合いか」

だし巻き玉子を頬張りながら、そこは聞き逃さなかった。甲斐さんの衝撃発言に思わず全身が耳になる。
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