乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
オニキスは魔除けと、邪気祓いのパワーストーン。身に着けたら、悪いものを寄せつけないって言われてる。意思をつらぬく強さをくれるって言われてる。

胸がつまる。由里子さんがどんなに心を痛めて、あたしと真、榊のこれからを願ってくれてるか。

輸入雑貨店のオーナーで世界中を飛び回って、なかなか会えないけど、いつも彼女にしかできないサプライズをくれる。シンガポールでの榊と千也さんの様子を『晶には内緒』って、ときどき知らせてくれたのも由里子さん。ほんとにほんとに、どんなに掬われたか。

「お使いも済んだしオレの役目は終わり。・・・で、いーの?ノブ兄」

「挨拶に来たわけじゃねぇんだ、好きでいいじゃねぇか。お前にたまには違う酒を飲ませたくなっただけだぜ、俺はよ」

「ハイハイ」

両手で降参のポーズした陽人さんがシノブさんと同じテーブルに落ち着き、榊もあたしの向かいに戻った。全員にグラスが渡ったところで真がジョッキをかかげる。

「ウマい酒が飲めて、オレの宮子が笑ってれば文句ナシってことで、カンパーイ!」

「ああ、そりゃ悪くねぇな」

こっちに流した横目が不敵に笑ってるシノブさん。

陽人さんと知った風で話す真の無防備な顔を眺めながら。シノブさんが継ぐ二の組と、陽人さんが継ぐ三の組と、それを束ねる仁兄の一ツ橋組の結び目が確かに見えて、未来は無敵に思えた。
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