乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
「…どうかしたのかよ」

ぼそっと聞こえた方を振り向く。見慣れた仏頂面は、さっきの男泣きの跡をどこにも残してない。

一瞬、ついと逸らされた眼差し。バツが悪そうに。そういうとこ自分に不器用で、そのくせ千里眼で、あたしの喜怒哀楽をすぐ嗅ぎ分けるんだから。

「来年も次も、ずっと先もみんなとここで、美味しいお酒を飲まなきゃね。って思ったの」

誓いを込めてブレスレットを左手首にはめると、榊にも手渡す。

「由里子さんからのお守り、悪魔でも死に神でも追い払ってくれるって。三人でおそろい」

そう言えば、おそろいは初めて。パワーも三倍増しってコトよね、絶対。

「みやこー、オレのも付けて」

語尾が伸びた、ほろ酔いモードで甘える真の左手首にもはめてあげた。

「写メ撮ってユリコさんに送ってやりな?」

三方向から戦隊ヒーロー風に、ブレスレットが艶めく腕を突き出した写真を一枚、お礼を添えてメッセージアプリで由里子さんへ。

『Good luck!織江ちゃんと一緒にまた会える日を楽しみにしてる。お兄とハルトをよろしくね!』って返事が、秒で返った。

「いつか秋生(ときお)にも会ってやって」

陽人さんがふっと笑む。

「ユキちゃんと藤さんの妹さん?もちろん喜んで!」

「そ、オレの大事な女」

あ。やさしい声。引かれてるように感じた“線”が薄くにじんだ。・・・気がした。
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