乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
「甘やかすのは宮子の役目でしょ」

さらっと返った彼女流のエール。

「心の中で褒めてるから、遊佐クンと榊クンの努力と根性は」

「ん、知ってる。紗江がすげー優しいのは」

「はいはい」

打って変わった艶っぽい笑い顔を、クールに受け流した紗江の口許はほころんで。真の再手術のことも、榊の弾キズのこともあれこれ詮索しないで、『元気なら文句ないわよ』のひと言で。

瑤子ママお手製のカラメルプリンや蒸しケーキをおやつに、新居を構えるまでの苦労話だの、出産や育児の話題で花が咲く。

コンビニ休憩を一回はさんで到着したのは、山すその森に囲われた川沿いのグランピング施設。

人数限定のランチ利用も人気らしく、日よけのタープ、グリルセット、ソファが完備されたデッキで、せせらぎと自然のアロマに癒されながら優雅にバーベキュー。気分がはしゃぐ。

「ピクニックって言うから、どっか景色のいいとこでお弁当広げるのかと思ってたー」

「こんなとこがあったなんて知らなかったわ。遠くないし、陽斗とパパも喜びそう」

「気に入った?」

『もちろん!』

紗江とユニゾン。笑い合う。

あの頃はカラオケ、ゲーセン、ファミレスがあれば飽きなかった。こんなとこまで黒スーツの男と目が合って、ふと。

あたし達はもう子供じゃないのが、懐かしいような愛しいような、寂しいような切ないような。
< 161 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop