乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
そこから毎日、凛太朗のショート動画を送って。寝顔、泣き声、這い這い、立っち。成長ぶりを上書きし続けた。

たまによこす短い返事を読み返しながら、首を長くした。





榊がいないお正月を二度過ぎた。三度目もいさぎよく諦めるつもりでいた十二月半ば。

帰ってきた。

海外に資金洗浄のルート確保っていう手柄も立てて、やっかむ人間もいなかった。

前より寡黙になって、黒い鉄の壁みたいな男が立ってた。

あたしを見つめた眸が刹那、音もなく迫ってきた気配に息を忘れた。

榊の眼の中にぎゅっと閉じ込められた。抱きしめられるより胸が切なかった。

足りないものを手に入れられたか、あたしは訊かなかった。

なりたかった榊になれたのか訊かなかった。

知ってる匂いがした。染みついた硝煙の匂い。真が隠すのと同じ匂い。

わかってる。傷だらけの二人が戦うための凶器なんだ・・・って。守るために引き金を引くんだ、って。

黒スーツの胸元におでこを寄せ、深く、息を吸い込んだ。

「おかえり榊」

どんな血で汚れた手だって全部、あたしのなんだから。

いつか運命に裁かれる時も、地獄に堕ちる時も、あんたと一緒なんだから。

相変わらずのうんざり顔で隣りにいなさいよ?

凛太朗の世話係のイス、空いてるんだからね?
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