乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
この子達の笑顔のためなら何だってしてあげたくなる、もっとずっと笑っててほしくなる。注ぐ愛情を素直に受け取ってもらえることが心底、幸せだって思える。

だから、あたしはもっと真にワガママ言えばよかった。叶えさせてあげたらよかった。ちょっとだけ後悔してる。

「真、あたしもお手洗い行ってくるね」

「ん。キクチ、宮子についてけ」

開演三十分前。子供達を先に済ませ、護衛係を連れ立ってそこそこな距離をまた歩く。

半歩下がってついてくる自称ハタチのキクチくんは、背伸びして粋がってるヤンチャ小僧だけどリフティングが得意で、凛太朗が懐いてるひとり。

事務所も若い子がずいぶん増えた。行き場を簡単にあきらめるのか、極道の怖さも知らず堕ちてくる。・・・気はしてる。

ベンチ席とブルーシート席が帯みたいに広がり、土手沿いのグランドは見渡すかぎり人で埋まってた。暮れがかりの夕空の下、臨時仮設トイレの案内看板脇で彼を待たせ、順番の列に並ぶ。

十五分ほどかかって急いで戻ると、アロハな柄シャツ羽織ったハーフパンツの金髪がどこにも見当たらない。

「・・・?」

真の言いつけは絶対だし、あたしを放ったらかすハズないし、姿を探して右に左に目を凝らす。

遅くなると心配される。理由はどうあれ別々に帰ったら、キクチくんはきつく咎められる。

騒いで、子供達のせっかくの楽しみを台無しにしたくない。うん、あたしが勝手にはぐれた・・・で押し切ろう! 

腹をくくって踵を返した刹那。

「・・・一人でウロつくんじゃねぇよ」

頭の上で低い声を聴いた。
< 180 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop