乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
カタギの一般企業なら『持ち帰って検討します』がセオリー。でもあたし達にそんなのは通用しない。

目を落として端から追ってく英単語の羅列は、学校の教科書とはわけが違う。今さら遅いけど、もうちょっと真面目に勉強しとくんだった。

交換条件で人身売買か臓器売買の契約とか?一ツ橋の利権をよこせとか、乗っ取りとか、どうしたって悪い想像ばっかり浮かんでくる。

「宮子、オマエが真に受けてどーすんの。馬鹿なガキでもすぐ解ける引き算だろ」

真がシニカルに笑った。

そうだね。何が書いてあるかも分かんない書類にサインなんて、よっぽどの善人かバカだよね。

ただなんとなく。ただの直感。高津さんはあたしを試したがってるだけ・・・な気がしてる。信じるか信じないか、ただそれだけを。

先の答えをいくつも用意してて、あたしがどのカードを引いても多分このひとは。

「榊」

何万回、何十万回呼んだかしれない男の名前を呼ぶ。そこに全部こめて。

「・・・かまわねぇよ。俺はお前のもんだろが」

「うん」

お互い顔も見なかった。あたしの言いたいことなんて、あんたが分かんないハズないもんねぇ。胸の内で大きく息を吸った。

「千也さん。書くもの貸してください」
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