ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「瀬戸山って……これ、あの御曹司の名前よね。どうして自分のところで花を手配しないのかしら。瀬戸山園にはうちよりずっと立派なブライダル部門があるのに」
私もカンナとまったく同じ感想を抱いた。
敗北宣言するわけではないが、三百万円分の花を確保するのも、式の雰囲気や会場にぴったり合う装花を提案するのも、瀬戸山園の方が確かなノウハウを持っているはず。
こんな小さな会社に依頼する理由が見えてこない。
もしかして、彼をフッた私への当てつけ……?
「苑香、大丈夫? 顔色が悪いみたいだけど」
カンナに声をかけられてハッとする。
どんな理由で依頼された装花だとしても、個人的な事情は関係ない。
統と蘭子さんが本当に結婚するなら、花屋は真摯にふたりを祝福するお手伝いをするだけだ。
「うん、大丈夫。あまりの金額にびっくりしちゃっただけ。右原さん、耳寄りな情報をありがとう。営業部の担当者にしっかりねって伝えて」
「わかりました」
その時、入り口近くの壁に取り付けられた会議室の内線が鳴った。すぐに立ち上がった左木くんが受話器を取る。
「はい。……社長に? 少し待ってください」