ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「な、なんですか?」
「……いや、なんでもない」
瀬戸山はその先の言葉を継がず、また前に向き直る。
菜の花スムージーなんてばかげた発想だと思われたのだろうか。
しょうがないじゃない。うちは瀬戸山園と違って、企画段階で食の専門家に意見を募る余裕はないのだ。
「べ、別に本気で言ってるわけではありません。以前瀬戸山さんに指摘されたように、今の美吉ブロッサムは思い付きの新しい企画なんてやってる場合じゃないですし」
「別に本気でもいいだろ」
ボソッと瀬戸山が呟いた。見つめた先の彼は、意外なほど優しい目をしていた。
「えっ……?」
「実際にやるとなったら現実的に考えなきゃいけないだろうが、好きな花のことで頭を一杯にして、あれもこれもやってみたいと思える積極性と柔軟性がきみのいいところだ。浮かんだアイデアはいつかチャンスが来た時のために温めておけば、きっと役に立つ」
思いがけない褒め言葉を受け取り、胸がくすぐったくなった。
瀬戸山と恋愛関係になるつもりはなくても、彼に励まされると不思議と力が湧いてくる。
常にライバルだと意識している相手だからかな……。