ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「そう……ですね。いつかやりたいな」
彼の言葉に背中を押されたように、本音を口にする。
瀬戸山はふっと微笑むと、軽く握り合っていた手を一度離し、指を絡めて握り直した。
これ、恋人繋ぎ……。いくらなんでも恥ずかしいんですけど……。
「ま、その前に瀬戸山園が同じ企画を出して成功させてしまうかもしれないが」
「えっ? ダ、ダメです! そんなの泥棒……っ」
「同業者の前で軽々しくアイデアを口にしたきみが悪い」
不敵な笑みを浮かべる瀬戸山に憤慨し、恋人繋ぎなんてもはやどうでもよくなってくる。
むしろ嫌がらせのように彼の手を強く握ると、久々に心に思い浮かべた瀬戸山人形をぽかぽかと殴りつけるのだった。
バラ園のそばにくると、風に乗って花の甘い香りが運ばれてきた。マスクをしていても感じる上品な香りにうっとりする。
いい香りのする花は他にもあるけれど、バラはやっぱり特別だ。
ワクワクしながら足を進めると、まず入り口で出迎えてくれたのは、黄色いつるバラが巻き付いたアーチ状のトンネル。
こぼれ落ちそうなほど大きな花はどれも見事に美しく、おとぎ話の世界に迷い込んだみたいだ。