ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「綺麗……」
「ああ。見事なバラだ」
たくさんのバラを背景に微笑んだ瀬戸山は、さながら王子のよう。
といっても見た目の話だけで、中身はどちらかというと悪役が似合う性格だけど。
「苑香は好きな相手からプレゼントされるなら、何色のバラが欲しい?」
「えっ? 好きな相手?」
不意に投げかけられた質問にどきりとする。瀬戸山とつないでいる手が、うっすらと汗ばんだ。
「そ、そんな人いないのでわかりませんよ」
「別に想像でいい。ただの好奇心だ」
想像って言われても……。花屋をやっているくせに、男性から花をもらったことって実は一度もないんだよね。
若干の気まずさを感じつつ、辺りをキョロキョロする。
この辺りに栽培されているのは大輪の花を咲かせるバラの品種の主流、ハイブリッドティーローズが多く、王道の赤、落ち着いた紫、ロマンチックなピンク、心が洗われるような白、生命力あふれるオレンジなど、どの花も堂々と咲き誇っていて、その美しさは甲乙つけがたい。
どうしてもひとつに決められなかった私は、バラ園の景色全体を眺めてぽつりと呟く。
「こうして花束にできないほどのバラを見られるのが、一番うれしいかもしれません」