ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
花束のために切り花にしてしまうと咲いていられる期間も短くなる。生きた状態の美しいバラの姿や香りを思う存分楽しめるこの場所は、本当に贅沢な空間だと思うのだ。
「じゃ、今日のデートプランは悪くなかったんだな」
つないだ手をくいっと引かれて、顔を覗き込まれる。
しまった……。つい正直に話してしまったけど、今のって瀬戸山を喜ばせる発言だった……!?
「バ、バラ園が素晴らしいというだけで、私は別に……っ」
「相変わらず素直じゃないな。マスクからはみ出してる頬まで赤いぞ」
「気のせいです……っ! 私、先に行きますから!」
これ以上顔を見られていたくなくて、彼の手をパッと離すとひとりで駆け出した。
こんなはずじゃなかったのに……。彼と結婚するなんてやっぱりお断りだと言うためにここに来たのに……。
ぐちゃぐちゃな感情のまま、サンダルを鳴らして走る。簡単に追いつけないであろう距離までたどりつくと、ようやく足を止めた。
その場所は野生種のバラに囲まれた噴水広場だった。大理石でできた円形の噴水、その中央からは霧のように水が噴き出し、水面に浮かんだ色とりどりのバラの花びらを揺らしている。
軽く後ろを振り返るものの、瀬戸山の姿は見えてこない