ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
よかった、追ってきてない。このまま愛想をつかしてくれれば楽なんだけど……。
私はゆっくり足を進め、ベンチにもなっている噴水のふちに腰かける。軽く後ろを振り返ると、水に浮かんだバラの花びらにそっと触れた。
瀬戸山はいつも私に素直じゃないって言うけれど、別に私は彼のことなんて……。
伏し目がちにため息をついていたその時、花びらの上にぽたっと小さな雫が落ちてきた。
噴水の水がここまで跳ねたのかと思いきや、見上げると私の鼻の頭にもぽつんと冷たい水滴が当たる。
「雨……?」
嘘。天気予報で言っていた時間よりまだ早いのに……。
気づいた時には本降りになってきて、噴水の水面にいくつもの雨の波紋ができては消える。私のワンピースも、肩や裾が少しずつ濡れてきた。
どこかで雨宿りしなきゃ……。
屋根のある建物を探して視線さまよわせていると、焦った様子でこちらに駆けてくる瀬戸山の姿が目に入る。
とっさに逃げたくなったものの、足が動かなかった。
「苑香、こっちだ」
迷わず手を伸ばしてきた彼に、きゅっと心の奥が疼く。
自分から彼の元を離れたくせに、今は来てくれてよかったって思ってる……。