ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
彼はただのライバルだし、時々意地が悪いし。九条百貨店の令嬢と政略結婚を控えているような御曹司で、つまり、住む世界の違う相手だ。
これ以上踏み込んだ関係になったら、遼太くんの時よりも苦労するかもしれない。
わかっているのに……彼を拒絶する言葉が出てこない。
「苑香」
葛藤する私に気づいているのか、瀬戸山が優しく私の名前を呼んだ。
それから、膝の上で握られた私の手に、自分の手をそっと重ねる。
温かくて大きくて、デートの間中何度も私を引き寄せ、頼もしく引っ張ってくれた手。
「俺はまだ、きみと一緒にいたい」
まっすぐな言葉に、心を揺さぶられる。おそるおそる覗いた彼の瞳は切なそうに細められていて、胸が詰まったように苦しくなった。
そっけない態度を続ける私を、どうしてそんな目で見つめられるの?
「もう、少しだけ……」
やっとの思いで、声を絞り出した。これから言おうとしていることが正しいのかどうかわからない。
だけど……こんなに心を乱されたまま、私だって帰れないよ。
「少しだけなら……一緒にいます」